『悲しみを背負った者たちの物語』ザック・スナイダー監督作品「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」【映画レビュー(ネタバレなし)】

まずは予告編をご覧ください。

 

いやぁ面白かったです。もっと早くに観ておけばよかった。

というのも、ずっとずっと気になってはいた作品なんです。

僕はヒーロー映画に大して思い入れがあるわけではなく、全然詳しくはないのですが、バットマンのダークナイトシリーズは大好きで、何よりもクリストファー・ノーラン監督が大好きなんです。

ダークナイトシリーズの大成功があったからかわかりませんが、「マン・オブ・スティール」から「バットマン vs スーパーマン」。そして「ジャスティス・リーグ」へと繋がる「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズは、プロデューサー陣の中にクリストファー・ノーランさんの名前が入っています。

そして「マン・オブ・スティール」については原案にも名を連ねています。

『クリストファー・ノーラン監督が原案を勤めたスーパーマン。一体どんなスーパーマンになるんだろう。』

そうやって楽しみにして観た「マン・オブ・スティール」。

面白かったです。面白かったんですが、少し『ん?』となってしまったんです。

そのせいもあって、なかなか観ることがなかった「バットマン vs スーパーマン」なんですが、今回はその「マン・オブ・スティール」の『ん?』となってしまった理由と、もっと早く観ておけばよかった「バットマン vs スーパーマン」の感想を書きたいと思います。

あらすじ

前作「マン・オブ・スティール」のゾット将軍とスーパーマンとの戦いから18ヶ月後。壮絶な戦いと共に人類の前に姿を見せたスーパーマンことクラーク・ケント。その壮絶な戦いにより自社の社員を失い、強大すぎる力を危険視するバットマンことブルース・ウェイン。ブルースは、核を持ち込もうとしているという噂の人物“ホワイト・ポーチュギー”を追っていく中で、レックス・コープの社長であるレックス・ルーサーJr.へと行き着きます。そこで持ち込もうとしているのは核ではなく、スーパーマンの力を抑え込む力を持つクリプトナイトであると知り、スーパーマンへの復讐のため、クリプトナイトを手に入れようと動き出します。

「マン・オブ・スティール」は面白いんですが、強すぎる。

 

前作の「マン・オブ・スティール」は、やはりクリストファー・ノーランさんが原案を考えただけのことはあり、普通のヒーロー映画とは異なる、深く、重厚で、奥行きのある物語になっています。

この物語はスーパーマンという形をとりながらも、その核には『親と子の愛の物語』があります。

その強大な力を制御できずに、周囲の情報が止めどもなく入ってきてしまい、錯乱してしまう幼い頃のクラークを救ってくれたのは、母の優しさでした。

そしてクラークのその存在は、世界の常識を覆してしまうことになります。同時に、強大な力は理解されないがために、恐れられ、忌み嫌われ、拒まれ、クラーク自身を不幸な目に合わせることになるかもしれません。

父は、その強大な力を人前で使うことを禁止していました。たとえそれが、誰かを危険から救うことであっても。そして、父自身を救うことであっても。

クラーク・ケント。その行動の柱には、常に父の姿があります。

「どんな人間になるか決めろ。善人だろうが、悪人だろうが、お前は世界を変える。」

この物語の葛藤の一つに、クラーク・ケントが、その正体を世に明かすのかどうかがあります。

クラーク・ケントの思いと、恐れと、親の愛。一人の人間(宇宙人ではある)の姿を深掘りしていく物語に、非常に深い感銘を受け、とても面白いです。前半は。

後半、スーパーマンが強すぎるんです。

ブン殴った、もしくはブン殴られた勢いで吹っ飛び、何棟もの高層ビルを突き破り、倒壊させます。まるでドラゴンボールのように瞬間移動しまくる敵とスーパーマンに、だんだん笑いがこみ上げてきます。

強いから。強いからそうなるんだろうなとは思うのですが、あまりにも現実離れしすぎていて、着いて行けなくなってしまいました。

前半はいいんです。メチャメチャいいんです。親と子の絆が見えるエピソードは何度観ても涙が出ます。ただ後半が『ん?』となってしまうのです。

ですので、その続編である「バットマン vs スーパーマン」は、観たさ半分、幻滅したくないの半分で、結局何年も観ていませんでした。

しかし、その心配は本当に杞憂でした。

そもそも「バットマン vs スーパーマン」の主人公はバットマンだった。

考えてみればこの映画のタイトルは「バットマン vs スーパーマン」であり「スーパーマン vs バットマン」ではないんですよね。つまり主人公はバットマンなんです。

なので、この映画はバットマンを中心に物語が進みます。

前作の「マン・オブ・スティール」では途中からスーパーマンが強すぎてしまい、観ている人の視点となるキャラクターの不在で、置いてけぼりになってしまいますが、「バットマン vs スーパーマン」は基本バットマンの視点、人間の視点で観ることができますので、しっかりと着いて行くことができます。

この物語の縦糸の一つに、人間社会にスーパーヒーローのような人智を超えた存在が現れたときに、果たして人々はどうするのか、社会はどうなるのかというのがあります。

まさに前作でクラーク・ケントの父が考えていたことが表出するわけです。

「どんな人間になるか決めろ。善人だろうが、悪人だろうが、お前は世界を変える。」

その人々の代表として、言ってみればバットマンがいるわけです。「バットマン vs スーパーマン」の構造は「人間 vs 人間を超えた存在」でもあります。

スーパーマンを崇める者もいれば、恐れる者もいる。そしてまた、利用しようとする者もいる。

市民、政府、企業。そして次作「ジャスティス・リーグ」へと繋がる「メタヒューマン」。

それぞれの思惑と要素がグルグルと絡み合い、それでいて丁寧な心情描写もしっかりとあり、話に置いていかれることもなく、濃厚な物語を織り成していきます。

先程のあらすじでは全然解説し切れないくらいの、複雑な物語で、めちゃめちゃ面白く観ることができます。本当に素晴らしい。凄いです。

重厚な物語が好きな人には超オススメ。

ヒーロー映画に大して思い入れがなく、全然詳しくはない僕が言うのもなんですが、いわゆるヒーロー映画はそんなに重いものはなく、軽ーくエンターテインメントとして楽しむことができるものが多いという印象です。

クリストファー・ノーラン監督のバットマン「ダークナイト・トリロジー」も、割と重厚な物語ですが、リアリティのある現実に足のついた物語でした。

「バットマン vs スーパーマン」は、そのリアリティのある世界に人智を越えた力が加わり話が展開していきます。

そして物語の奥底には「悲しみ」があります。

ゾット将軍とスーパーマンとの戦いにより生まれてしまった犠牲による人々の悲しみ。ブルース・ウェインはその悲しみと共に、幼い頃の両親の死というものもあります。そしてクラーク・ケントには父の死の悲しみ。そしてスーパーマンに対する憎悪による悲しみもあります。

そしてその悲しみが、それぞれの行動の原動力となり、物語を進めていきます。

悲しみを背負い、生きていく人々の物語とザック・スナイダー監督の演出が見事にマッチして、個人的にはとてもとても大好きな作品です。

続編「ジャスティス・リーグ」は賛否両論!?

 

実はこの映画、前作まで監督を勤めてきたザック・スナイダー監督が途中で降り、「アベンジャーズ」などを監督したジョス・ウェドンさんが代わりに監督を勤めた作品なんです。
(降板理由は長女の逝去ということです。)

言われてみれば今までの作品にあった暗さは影を潜めて、全体的に明るい画になっている印象を受けます。

しかしザック・スナイダー監督の降板は追加撮影の最中ということで、実際はほとんど撮影が終了した後だったようです。にも関わらず作品で使用されたザック・スナイダー監督撮影分は全体の10%程度だったという情報もあります。

映画を観たファンからは賛否両論の声が多く、ザック・スナイダーが監督した「スナイダー・カット版」の公開を大きく望む声が長い間あがっていたようです。

うーん…改めて↑の予告を観ますと、確かに今までのあの重厚感が好きな人はいやかもしれないですね…。まぁ予告でしか判断していませんが。

そんなこともあり、2020年5月、「スナイダー・カット版」が2021年にワーナーメディアの定額制動画配信サービス「HBO Max」で配信することが決定したようです。

その一部がちょうど最近、YouTubeに上がってきました。

 

いやっ…さすが…ダーク…怖いーっ……。

しかし「スナイダー・カット版」は全部で214分あるようです。4時間の映画になるか、全6話のミニシリーズになるかは現時点ではわかっていないということでした。

うん。観たい。でも来年ですからね。それまでひとまずジョス・ウェドンさんの「ジャスティス・リーグ」を観たいと思います。

こちらもオススメ。

ザック・スナイダー監督のヒーロー映画といえば「ウォッチメン」もオススメです。

 

やっぱりいいですね。このダークな画作り。

恐らく原作自体がそうなんだと思いますが、東西冷戦による対立がテーマにあり、少しそこは今の時代と合っていませんが、話としてはとても面白く、オススメです。

この作品にもヒーローの闇の部分があり、それが同時にアメリカのヒーロー像の闇というか、汚れた部分を暗示しており、普通のヒーロー映画にはない、メッセージ性の強い作品ともいえます。

「バットマン vs スーパーマン」と同様のダークさがありながら、また違ったタイプの面白さがあります。

 

 

いかがでしたでしょうか。

人智を超えた強大な力が現れた時、人々はどうするのか。とても難しいテーマをリアリティを持って、そしてエンターテイメントとして見事に物語に落とし込んだ、とても素晴らしい作品です。ぜひ、一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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