『なんだこれの連続。聴くたびに新しい発見があります。ミスチル本領発揮です。』 – Mr.Children「Birthday / 君と重ねたモノローグ」【ディスクレビュー】

Mr.Childrenが約2年8ヶ月ぶりに、NEW SINGLEを両A面で発売しました。

時系列で言いますとこの一つ前にドームツアーがあり、そのライブのレビューは↓で書いておりますのでよろしければご覧ください。

『いつまでMr.Childrenでいられるんだろう。』-Mr.Children「Dome Tour 2019 Against All GRAVITY」【レビュー】

そして、そのMCでも言っていましたが、Mr.Childrenはこのツアーの後、ロンドンにレコーディングに行ったようです。今回届けられた2曲はその中で作られた曲ということでした。

アルバム「重力と呼吸」を聴けば明らかですが、Mr.Childrenはここ最近、挑戦していくこと、変わり続けていくことを肯定して前に進もうとしています。

「皮膚呼吸」が最もそれを表現していますが、「年齢」や「老化」など、言ってみれば「重力」と「呼吸」のように、生きていく中で逃れられないもの。それらを受け入れながらも、それでも挑戦する。そのひとつとしてのロンドンレコーディングだと思っています。

「ロンドンレコーディング」と聴いて、僕は驚きと共にワクワクが止まりませんでした。そしてそのワクワクに、Mr.Childrenは見事に応えてくれました。

このワクワクは、ただアーティストが海外でレコーディングしたから沸き起こったわけではないのです。実はMr.Childrenは、そもそも海外でのレコーディンを好んで行うアーティストではなかったのです。

そのMr.Childrenが、わざわざ海外に行き、レコーディングしたのです。その事実にワクワクしないわけがありません。

ミスチルの海外レコーディングは「Q」以来、約20年ぶり。

過去の海外レコーディングしたアルバムを列挙しますと

  • Versus(ニューヨーク、ウォーター・フロント・スタジオ)全曲ではありませんが
  • 深海(ニューヨーク、ウォーター・フロント・スタジオ)
  • BOLERO( ロンドン、アビー・ロード・スタジオ)
  • Q(ニューヨーク、スタジオ名は不明)

です。

「Q」の発売が2000年ですから、20年近く全然していなかったんですよね。まー、調べる限りではという注意書きは付きますが、しかし海外レコーディングが好きではないというのは、曖昧ですいませんが、発言していた記憶があります。

確かロッキングオンジャパンか何かのインタビューだったと思うのですが、海外でのレコーディングの際にはずっと「日本に帰りたい」的なことばかり言っていたというのが書いてあったのを記憶しています。

また、名曲「彩り」の生まれたきっかけとして、有名なエピソードがあります。

それは、これからのMr.Childrenの活動をどういう方向性にしていくかというミーティングの時。当時のプロデューサー小林武史さんの「もっと世界に向けて何か発信していくようなことをやっていってもいいんじゃないか」という発言に対し「何か違うなー」と思ったんだけど、その時は何が違うのか説明することができず、しかし次の日、歌詞とメロディーが生まれていって、それがその何が違うと思ったのかの答えとなっていたというものです。

内向きと言ったら少し悪い印象になってしまうかもしれませんが、手の届く範囲での幸せをしっかりと噛み締めて毎日を生きていくことの喜びを歌った曲が、「Q」の後のアルバム「It’s a wonderful world」以降増えていき、「彩り」も収録されたアルバム「HOME」で一つの完成を迎えたと思っています。

そして、その反動のように、次のアルバム「SUPER MARKET FANTASY」のようなエンターテイメントに満ち、そしてより肉体的な音楽へと、それ以降の作品が変わっていったのかなーとも、個人的には思っています。

そんな彼らが今回、久しぶりに海外に目を向け、ロンドンでレコーディングすると言い出したわけですから、変わり続けること、挑戦することを選んだ結果、どんな曲が生まれ、そしてどんな曲を届けてくれるのか、楽しみでしょうがなかったわけです。

まず最初に驚いたのが音の良さ。

MVが公開されるかと思って待っていたのですが、なぜか全然公開されず。ですがひとまずは↓の予告編で聴くことができます。

のび太くんたちの声に紛れてよく聴こえませんが、しかしギターの音の生々しさは伝わるかと思います。

エンジニアはU2、Sting、Sam Smithを手掛けたSteve Fitzmauriceさん。スタジオはロンドンのRAK Studiosです。マスタリングは、NYの名門MASTERDISKのScott Hullさんが担当。

ということですがよくわかりませんね。

しかし例えばRAK Studiosは、宇多田ヒカルさんがアルバム「初恋」をレコーディングしたところでもあります。スタッフの違いもあるとお思いますが、このアルバムの音は「Birthday / 君と重ねたモノローグ」とはかなり違ったものになっています。

海外でレコーディングしたから、スタジオが同じだから音が変わるのかと、そういうわけではないんだと思います。一音一音、こだわり抜いて作られたから、こういう音になっていったんだと思います。

それはギターの生々しい音に加えて、ドラムの存在感。すぐそこにいるかのようなスネアの音。タムの音。それだけでなくストリングスもまた生ですぐ近くで演奏しているかのような、立体感のある音になっています。

前のアルバムからここまで変化するのか。すごい。

…早くアルバムで聴きたい…!!

「Birthday」のシンプルで複雑なアレンジ。

シングルが発売になり、曲を通しで聴いた時に、音の良さの次に驚いたのが、今までのMr.Childrenの曲との構成の違いです。

Mr.Childrenと言えば、言ってみればJ-POPの頂点にいるアーティストの中のひとつであり、その曲は「J-POPの代表」的な部分があると思います。

J-POPと言えば、サビに向けて波を作ると言いますか、サビで感情が爆発して感動するような構成になっているものがほとんどだと思います。

なので、シングルの発売前にドラえもんの予告で「Birthday」を聴いたときに、そこで聴いた曲の部分が、一番のサビでやってくると思ったんです。でもそれは間違っていました。予告で流れた部分は曲の本当に最後のサビだったんです。

曲全体を通してじりじりとテンションを上げていき、最後のサビ前で一度静かにして緩急をつけてからドーンとぶち上げる。

だから曲全体を通してアレンジがどんどん変わっていきます。普通は1番と2番である程度は似ているじゃないですか。でもそうじゃない。ドラムもベースもギターも、そしてストリングスアレンジも、全部が違う動きをしています。

だから聴いていて本当に飽きません。聴くたび聴くたびに毎回発見がある。

それでいてアレンジ自体は、音の壁を作るというよりはそれぞれの場所に楽器を配置して空間的に曲を感じられるようになっています。ボーカルだけでなく、ギターも、ドラムも、ベースも、そしてストリングスも、全てが主役であり脇役であるような、全てがしっかりと存在感を持っているアレンジになっています。

どちらかと言えば最近の洋楽の流行に近いような、シンプルなアレンジかと思うのですが、そのシンプルさと存在感により、全ての楽器とボーカルが絡まりあい、複雑性を帯びながら、曲の終わりに向かって飛び立っていくような開放感が得られます。

いやーっ、本当にすごい曲だと思います。

「君と重ねたモノローグ」のアウトロ。

こちらはミスチルお得意の少し遅めのテンポでしっとりと聴くバラードです。

ギターの音がとてもいいですから、それが際立って聴こえます。ドラムの落ち着いた存在感。ベースの音の暖かさ。そこにキーボードとストリングスが合わさって、心がキュッと締め付けられるような、さすがミスチルと言いたくなる良い歌です。

と、いうところでは終わらないのがMr.Childrenの本当に素晴らしいところで、アウトロが、メチャメチャ盛り上がるんです。

ボーカルの終わった後、静かになったと思ったら急に晩餐会のような…なんて言うんですかね、あの音楽は。手を取り合い踊るような。

歌は一つのストーリーですから、それが今回特に映画のエンディングなわけですから、特にそのストーリーが歌をもって終わりを告げるわけです。でもその歌の終わった後、まるでその思い出を早回しで巻き戻っていくように音楽が加速していきます。

最初聴いたときに笑いながら思わず「ナニコレ!?」って言ってしまいました。素晴らしいです。

いやーっ、こちらも本当にすごい曲だと思います。

今までの全てが古く感じます。

何に書いてあったか忘れましたが、確か「HANABI」が発売された時期かと思いますが、「ミスチルが変わるとJ-POPが変わる。」と何かに書いてありました。

いやっ、確かにその通りだと思うのですが、果たしてこんなふうに変われるもんでしょうか。

こんなに音のクオリティを上げて、音を壁のように構築するのではなく、空間的に配置するように変えて、アレンジの常套句を否定して。

今までの自分を一度壊して、再構築してをしないと無理なような気がします。

まーでもしかし変わったら面白いですよね。正直このシングルを聴いてから今までの全てが古く感じました。しかしこの曲自体は古いものと新しいものが同居しているような気もしますし。

Mr.Children本領発揮です。

いやーっ、面白い!!ミスチル好きでよかった!!

そんな風に思わせてくれる今回の両A面シングルです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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