『面白い物を観ようと思って観てはいけないが、充分面白いです。』-キャスリン・ビグロー監督「デトロイト」【映画レビュー(ネタバレなし)】

まずは予告編をご覧ください。

恥ずかしながら僕はこの事件について全く知らなかったのですが、1967年に実際にアメリカで起きた暴動と、その中で発生したアルジェ・モーテル事件について描かれた映画です。

監督は「ハート・ロッカー」や「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグローさんです。

上記2作でもわかるように、この方は実際にあった出来事などを撮らせたらピカイチと言いますか。特に「ゼロ・ダーク・サーティ」なんて、どこからその素材というか情報を得たのか。そしてそれを映画に昇華する力。本当にすごい力を持った監督だと思います。

「デトロイト」は、いまだに真相の究明がなされていないアルジェ・モーテル事件を、一部、当事者の記憶と記録を元にしながら描いています。

あらすじ

1967年の夏、アメリカ・ミシガン州デトロイトで些細なことがきっかけで黒人と警官が衝突し、やがて暴動へと発展してしまいます。まるで戦場のようになった街で、鳴り響く銃声。デトロイト警察、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元警備隊は、捜査のためにアルジェ・モーテルの別館に入ります。そして数人の警官が、モーテルの宿泊客相手に捜査手順を無視した尋問を開始。その日、アルジェ・モーテルで何があったのか。

警官を含めた登場人物数人を事件発生前から描き出す。

暴動のきっかけから事件の発生集結。そして裁判までをそれぞれの登場人物の視点からしっかりと描いていきます。

白人の警官黒人の警備員。デトロイトの黒人によって結成されたバンド、ザ・ドラマティックスのメンバーとマネージャー。アルジェ・モーテルにたまたま泊まっていた白人の女性黒人の宿泊客

事件の始まる前の状況における、それぞれの背景や人物像から丁寧に描いて行きます。それもあってか、実際に事件の始まるまでの40~50分くらいは若干退屈です。

いやっ、若干です。本当に。欠伸などは全く出ませんし、どちらかと言えば面白い部類の退屈です

言っている意味よくわからないですね。やはり、監督の力量だとは思いますが、他の監督だったら単調で物語性などのない素材を、しっかりと退屈させないような工夫をされているからなのだと思います

これは、それほどまでに細心の注意を払いながら、登場人物の背景をしっかりと描きたかったから、あえてそうしている。そうなってしまっている、のだとも思います。

面白い物を観ようと思って観てはいけないが、充分面白いです。

そして始まる暴動。そこからの緊迫感は本当に息もできない程です。

見出しにも書いたように、面白い物を観ようと思って観てはいけないが、ここからは充分面白いです。

↑で書いたように前半は若干単調な展開になりますので『すごい面白い物を観たい!』という心構えで観ると、若干残念に感じてしまうかもしれません。そういう意味での『面白い物を観ようと思って観てはいけない』です。

しかし暴動が始まると、残り時間があっという間に過ぎていきます。

それぞれの登場人物の心理状況や感情が丁寧に描かれていて、正直めちゃめちゃ面白いです。

でも、これが本当に起きたことなんだと気が付く訳です。そういう意味でも『面白い物を観ようと思って観てはいけない』と思ってしまう訳です。

日本だと理解できない人種差別という病気。

所々で剥き出しになる黒人に対する悪意。弱者に対する暴力。暴力による横暴。

この頃、本当に人種差別を題材にした映画が増えていると思います。2019年のアカデミー賞のノミネート作品は人種差別がテーマの作品ばかりでした。

みんなの意識が高まっているとともに、逆にアメリカが今いかに危険な状況にあるのかと、少し心配になります。

相武紗季さんが少し前にアメリカに留学した際の体験をTV番組で話していました。

『地下鉄に乗っていた時、目の前の女性が急に、「私はあなたにその席に座って欲しくない」と言ってきた。おそらく自分が黄色人種だから』だと。

日本にいると想像もつかない出来事ですよね。しかしその後、こんなことも話されていました。

『それをアメリカでできた友達に話すと、「確かにそういうことを言う人もいる。でも同時に、そう言うことを悪いことだと思う私たちのような人もいる」と言ってくれました。』

文言は記憶の中で要約していますが、こんな感じのことを話していました。

でも、これってきっと日本でも起きていることなんだろうなとも思います。

国籍の違いや性別の違い、LGBTの問題なども、もちろんそうです。

それが極限状態の中にあると特に、剥き出しになり、暴力と悪意の中に晒されてしまうと思います。

自分を律する心と、相手の気持ちになって考えられる心を持ちたいものです。

やはりキャスリン・ビグロー監督はすごい。

少し映画の感想とずれてしまいましたが、演出面での凄さを一つだけ語らせてください。

この映画のカメラは、結構後ろから撮ってることが多いんです。そしてカメラの動きがぶれていたりと、まるでそこに自分がいるかのような視点でずっと撮られています。

しかもそれがうまい具合に気にならない程度にです。

映画を通して終始感じる臨場感はここからも来ているかと思います。

まあ僕も映画の撮り方はよくわかりませんが、とにかく監督がすごいんです。

こちらもおすすめ。

ここからは「デトロイト」に関連したお勧め映画を紹介します。

まずは「スリー・ビルボード」をお勧めします。

 

こちらの映画、感想はまたそのうち書きたいと思っていますが、現状への不満やトランプなど、今のアメリカの雰囲気があるから生まれた映画なのかなと思っています。アメリカの現状について全然、全く知らないんですけどね。

 

そしてもう一つが「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」です。

 

これこそ本当に物語性ゼロです。上映時間190分ありますし。事実をそのまま描くとこうなるのかなとも思います。ハリウッドと日本の違いですかね。手段の目的化や、内に内にばかり向けられた意識がこう言った事件を引き起こす原因の一つなのではないかと思うのですが、「デトロイト」を観ている時、時折この映画のことが頭を掠めたのを覚えています。

 

この二つでおわろうかと思ったのですが、どうせならポジティブな感情を内側に持った映画を一つ、紹介したいと思います。

2006年にアカデミー賞作品賞を受賞した「クラッシュ」です。

 

すれ違い、衝突しながらも、それでも人と人は出会い、繋がりあっていく。

『それをアメリカでできた友達に話すと、「確かにそういうことを言う人もいる。でも同時に、そう言うことを悪いことだと思う私たちのような人もいる」と言ってくれました。』

世の中、悪い人ばかりではないはずです。そういう人が、損をしないように、まずは自分が、そう人にならなければいけないなと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか。

所々映画の感想と関係ないことを書いてしまいましたが、こんな駄文長文、最後まで読んでいただきありがとうございました。

あわせて読みたい