『00年代を代表する傑作。』- 宮藤官九郎脚本、窪塚洋介主演「GO」【レビュー(ネタバレなし)】

10年に1度、こういう作品が生まれると思っています。と言ってもそんなに長く生きてる訳ではないですが。

その年の映画賞を総なめにして、それでいてスタッフ、キャストは新人ばかり。

話題になっていろんな人が見始めるけど賛否両論。好きな人はとんでもなくハマるけどそうでもない人は「ん?」ってなってケナし始める。最近だと「桐島部活やめるってよ。」がそうだと思います。『じゃあ「GO」の前は?』と言われたら聞こえないフリをするしかありませんが。

その作品がなぜそんなに扇風を巻き起こすか。

それはとんでもなくど真ん中に時代を反映しているからだと思います。

そこから数年間はその作品の影響を受けた作品がたくさん出てきます。良くも悪くも。まあ話題になったんだから当たり前と言えば当たり前なんですが。

つまり何が言いたいかというと、間違いなくこの「GO」という映画は『00年代』を代表する傑作だということです。

あらすじ

在日韓国人2世の主人公杉原。あだ名はクルパー。民族学校開校以来のバカと呼ばれた彼は、日本人学校に行くことを選択する。ある日、友達の加藤の開いた誕生日パーティーで桜井という風変わりな少女と出会い、恋に落ちる。これは彼の青春物語である。

大人たちの負債を背負わされる子供達。

在日韓国人の男性を主人公にしているからと言ってそれだけがテーマではないと思います。

90年代。バブルが崩壊して、大人が作った価値観が崩壊していく中で新しい価値観が見つからない。

そんな中でそれに反発しながらも生きていかなくちゃならない若者達。

『なんで大人が作った負債やらなんやらの中で俺たちは生きていかなくちゃならないんだ。』

それが在日というレッテルの中で生きて行かなくちゃならない主人公。

宿命とでも呼べるような不条理と共に生き、そこに卑屈にも偏屈にもならずに、たくましく生きていく姿。

そこが現在と、これからの未来を生きていかなくてはならない若者たちと重なり、共感と魅力を感じたのではないかと思います。

そしてこの映画は若者だけではなく、大人の姿も描いています。

変わっていく社会や価値観の中で変わらなくてはいけない大人。

過去の価値観に縛られて若者たちを抑えつける大人。

社会に出たはいいけどうまく行かず「俺、向いていないのかな」と悩む普通の大人もいます。

若者だけではなく、大人たちも魅了した理由も、そこにちゃんとあると思います。

この映画は青春映画です。

青春映画は日常を描きます。

若者の視点から毎日をしっかりと描くことで、そこに関わる大人や社会と、未来、過去、その間の現在の姿を浮かび上がらせた、非常に稀有で、素晴らしい作品だと思います。

ということはさておき、ふつうに面白い。

という偉そうでカタイ話はさておいて、ふつうに面白いです。

演出はその時期の洋画の影響を受けているような少しワザとらしいカメラワークやらが多々あって少し恥ずかしくなりますが、脚本が宮藤官九郎さんですから。まぁ間違い無いです。

この時期のクドカン作品に多かった謎の『芸能人本人役で登場』ですとか。

思わず使いたくなる印象的なセリフも多々あります。

なんで全部シャブシャブしちゃうんだよ。俺にもシャブシャブさせろよ。」とか。

日本人の学校行った主人公に、民族学校の仲間から言われる言葉

テメェうわさじゃGパン腰パンしてマライヤキャリーのCD聴いてるらしいじゃねえか!

ってセリフとか。たまらないですね。

そして友達の会話、

俺今日誕生日なんだけど。

じゃあコーヒー牛乳おごっちゃげる。

若い頃このやりとりが好きで友達の誕生日の時にしょっちゅう言ってました。恥ずい。

でもそれよりもやっぱり、それぞれのキャラクターとのエピソードがたまらないです。

先輩の指紋押捺制度の時のエピソード。

親友正日との別れ。

彼女とのあれこれ。

警察官とコーヒー。

父の教え。

母の肝っ玉。

在日とかそんなこと関係ない。ただただただただ青春映画です。

窪塚かっけーっ

そして主演の窪塚洋介がカッコ良すぎる!変わらないなですね。今も昔も。

窪塚さんはこの作品で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を史上最年少で受賞しました。

窪塚さん以外にも素晴らしい俳優さんはたくさん出演していますが、個人的には父親役の山崎努さんがすごい好きです。もう流石の一言。

何気に水川あさみさんですとか大杉漣さんですとか新井浩文さんですとか、ちょい役で素晴らしい俳優さんが何気に出演していたんですよね。昔の映画を見返すとそういう楽しみもありますよね。

重厚な映画だったらいい映画なのか問題。

友達が言ってました。

「在日の話とか取り上げてるんだからもっと重厚にするべきじゃない?」

じゃあ聞きますが、重厚だったらそれでいい映画なのでしょうか。

重くなりがちなテーマを軽ーくおもしろーく見やすーくできるのもすごいんじゃないのかと思うわけです。

そもそも重厚で素晴らしい作品はたくさんあるけど、それは重いから素晴らしいのだろうか。

これはもしかしたら『泣ければいい映画なのか問題』と同じ種類の問題なのかもしれません。

しかしながらこの映画は青春映画なので、そもそもの土台が違うのかもしれません。

「生きている。恋をする。文句あっか。」

長いこと書きましたがこの作品がどういう作品かは予告編の最後に出て来るキャッチコピーに全て出てると思います。

みんな生きている。大人も子供も。社会やらとの軋轢を感じながらも。悩んで、考えて、頑張っている。いつの時代も。

読んでいただきありがとうございました。