現代の戦争とはなんなのだろうか。イラク戦争の映画4選【映画まとめ】

戦争が始まるかもしれないそうです。

年始から第三次世界大戦が始まるかもしれないとか、最悪の場合核戦争だとか、色々と聞きます。

Twitterでは戦争反対とかなんとか、ラブアンドピースな言葉があちこちから流れては過ぎていきます。

イラク戦争の始まり。その日を僕は鮮明に覚えています。なぜならその日は中学校の卒業式の次の日だったからです。
はしゃいでいた僕は、卒業式のその日は友達の家に泊まりました。
次の日、友達の家のテレビをつけると、暗闇の中を緑色のミサイルが飛んでいく映像が流れていました。それは、戦争が始まったことを意味する映像でした。

その時の気持ちはなんてことない。

『あっ、始まったんだなぁー。』

という感じです。

『あんなに戦争はいけないことだって習ったのに。みんな戦争反対!戦争反対!って叫んでんのに、さもそれが正しいことのように始まってしまうんだなぁー。』

それもあってか今回のこの戦争のことにも、少し冷めた目で見てしまっています。

911からイラク戦争まで、いろんな人が、アーティストが、戦争反対と叫んでいました。

『憎悪の連鎖は繰り返しちゃいけない。』『ブッシュに投票してはいけない。』『みんな、選挙に行こう。』

しかし、始まってしまったんです。戦争は。

別に戦争に賛成している訳ではありません。戦争なんて、起きちゃいけないと思います。悲しみだらけで、たまったもんじゃないと思います。

ただ、戦争反対と叫んでいるだけのやつに反対しています。

『なんでイラク戦争は始まってしまったんだろう。』

思春期の強烈な体験は思考の種を植え付けます。

正直答えなんてありません。そこからイラク戦争について、戦争について、あれこれと勉強したわけでもありません。

そう。何もしていないんです。

『戦争反対!!』って叫んだって、行動しなけりゃ何も変わらないんです。

『でも何も叫ばないよりはマシじゃん』と言うかもしれませんが、『何も叫ばない方がマシ』だとも思います。

なぜなら、何もしていないのに叫ぶその言葉は空虚で、叫べば叫ぶほど言葉がどんどん軽くなってしまっていくのを感じるからです。ちなみにその人はシリア内戦については何か叫んだのでしょうか。

『わたし的にはどさくさに紛れて、ついでに北朝鮮なんとかしてくれないかなって思う。』

同僚がこんなことを言っていました。それこそ世界大戦勃発じゃないか?しかし何も行動していない僕は、同僚と特に何も変わらないので、何も言えません。

特に戦争反対の意味もないですが、『イラク戦争とはなんだったのか』を知る意味でも、イラク戦争を描いた映画でオススメの作品を紹介したいと思います。

歴史的事実などをまま映画にしがちなアメリカですが、実はしっかりとイラク戦争について描いた見応えのある作品は少ない印象です。

『無音のエンドロールが語ること。』クリント・イーストウッド監督「アメリカン・スナイパー」

 

アメリカって、戦争しているんですよね。軍人、元軍人がいるんですよね。

戦争の賛否はともかく、軍人は本当に尊敬に値すると思います。死と隣り合わせの状況で何かを遂行しようとすることは、誰にでもできることではないと思います。

この映画はクリント・イーストウッドさんがメガホンをとり、アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルさんの自叙伝を映画化したものです。

アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のスナイパーであった主人公クリス・カイル。彼はイラクに派遣され、人並み外れた狙撃の精度により、仲間を守り、そして数多の敵の命を奪っていきます。4回にわたって行われたイラクへの派遣。その姿を丁寧な心理描写と、息詰まる壮絶な戦闘シーンと共に描きます。

味方から見ればたくさんの仲間を救った英雄でも、敵から見ればたくさんの仲間の命を奪った悪魔です。クリント・イーストウッドさんはその姿を肯定するでもなく、否定するでもなく、丁寧に、ありのままに描きます

イラクでは死と隣り合わせの生活でありながら、期間が終わりアメリカに帰ってくると、さも戦争など起きていないかのように、普通の日々が流れている。
そして時には自分たちが悪いことをしているように言われてしまう。

『俺たちがアメリカを守っているのに!』

ただ戦争反対と叫ぶだけでは見えてこない戦争のリアルがそこにあるのを感じました。

ここで面白さの話になって恐縮ですが、この映画、面白さの面でも非常に素晴らしいです。丁寧な心理描写から得られる濃厚さや、息も詰まる戦闘シーン。↑の予告編のような息のつまるシーンが基本的にずっとあります。

最後、実はエンドロールでは、全く音楽が流れないんです。

それはクリント・イーストウッド監督の、戦争を賛成も否定もすることもなく、ただ、戦争とはこういうものなんだと、実際の兵士の姿を描くことで言われているような気がしました。

映画としては、ただただ名作です。

『ビンラディンを追い詰めた女性。』キャスリン・ビグロー監督「ゼロ・ダーク・サーティ」

 

2011年5月2日、911の首謀者にして、テロ組織アルカイダの指導者、ビンラディンが殺害されました。

あらすじというほどもありませんが、この映画は2003年の着任から約8年、彼を追い続け、追い詰めたCIA女性分析官の姿を描いて行きます。

最初のシーン。拷問のシーンから始まります。主人公の着任の日の出来事なので、2003年の話です。

21世紀に世界一の経済大国が拷問を行っていたんです。

人権もクソもあったもんじゃないと思いますが、そもそも戦争をしているんですからね。そうでもしなきゃ情報を得ることはできないとも思ってしまいますし。それにそいつはテロで何人もの罪のない人々を殺している。そう考えると仕方のないことだとも思ってしまいます。

そして拷問する側も人間ですから、やりたくてやっているわけではない。その苦しみも所々に垣間見えます。

兵士ではありませんが、イラクという現場で敵と戦っている主人公たち。時には命を狙われ、テロの標的になることもあります。
戦いは過酷で、なんでこの人たちはこうまでして戦っているのだろうかと思ってしまう。幸せという言葉とはかけ離れた世界にいる人たち。

でもそれはアメリカの幸せな暮らしを守っている姿でもあります。

『本当に守っているの?憎悪を積み重ねて上塗りしているだけなんじゃないの?』
その言葉に賛成する知識も否定する知識も僕は持ち合わせていません。

小さな手がかりを頼りに、時に上司や、政治情勢と戦いながらもビンラディンを見つけ出そうと、そして殺そうとする姿。またここで物語的にはの話をして非常に恐縮ですが、非常に興味深く、そして面白い作品です。

戦争が終わっても続く、テロとの戦争。そこで戦う姿は、悲壮とも言えるほどに、凛々しいです。

ビンラディンを殺した後の最後のシーン。そこも含め、この映画の感想は簡単に語れるものではないと思います。世界情勢と同じように。

『兵士の現実。』キャスリン・ビグロー監督「ハート・ロッカー」

 

キャスリン・ビグロー監督はどこからこんな素材を手に入れるのか、ビンラディンを追い続けたCIA女性分析官だけでなく、イラクに駐留するアメリカ軍の爆弾処理班の作品も描いています。

テロとの戦いとは爆弾テロとの戦いへと結びついているイメージですので、爆弾処理班はテロとの戦いの最前線な訳です。

アメリカ軍爆発物処理班・ブラボー中隊のリーダーに就任したウィリアム・ジェームズ二等軍曹。まるで死への恐怖などないかのように遂行されるジェームズの爆発物処理。あらすじというほどでもないですが、そこから浮かび上がってくる兵士の現実に、ぐぬぬと、なんとも言えない感情になったのを覚えています。

 

↑に冒頭の3分ほどが公開されていますが、1番最初、ジャーナリストのクリス・ヘッジズさんの言葉が引用されています。

戦闘での高揚感は時に激しい中毒となる。

そしてその後にこの言葉が続きます。

戦争は麻薬である。

命の危険に晒されている恐怖。緊張。そしてそれから開放されたときの高揚感。

ウィリアム・ジェームズ二等軍曹は、危険な体験をしながらも、何度もイラクに派遣されてきます。平凡な日常には生きがいを感じられず、戦場こそが自分の居場所と思っている部分があるようです。そいてその命知らずな爆弾処理の姿。いつかは失敗し、無残にも死んでしまうでしょう。

タイトルの「ハート・ロッカー」はアメリカ軍のスラングで『苦痛の極限地帯』『棺桶』を意味するそうです。

戦場にしか生きられない人間がいることを、この映画は教えてくれます。

戦争映画は『戦争礼讃』『戦争反対』と、題材が題材ですので、観た人がメッセージを受け取りがちな部分が多いかと思いますが、もとからメッセージを用意して作られたものほど低俗な作品はないと、個人的に考えています
送られてきているのはメッセージではなく、現実の一つです。主人公が直面した戦争の現実の一つ。一人の人生の一部分です。それを観て、『戦争礼讃』なのか『戦争反対』なのか、もしくはそれ以外なのか。

問われているのは観た人の、戦争や、社会に対するメッセージです。

『帰還兵のPTSDの問題。』ポール・ハギス監督「告発の時」

 

死と隣り合わせの日常から戻ってきて、では明日から普通の日々を普通に送りましょうと言われても無理な話です。ある人はそこで感じた死の恐怖からの解放の高揚感に麻薬のように依存し、再び戦地へと赴いてしまい、またある人はアメリカでの日常に馴染めずに精神を病んでしまう。

どこに敵がいるかもわからないテロの恐怖と戦い、油断すれば死へと直結するかもしれない状況で、何人もの人を殺し、それが日常であった中で、アメリカに戻ってきて、普通の日々を送れと言われても、どこかに歪みは生じてしまうものだと思います。

YouTubeには↑の予告編くらいしか落ちていなかったのですが、映画.comにはもう少し長いバージョンの予告編もあります。

ベトナム戦争にも従軍し、軍警察を退役した元軍人の主人公。イラクから帰還してくるはずの息子が脱走したという知らせを受けます。息子を探すために現地へ向かい、地元警察の女性刑事と捜索を開始。しかし息子は後日、遺体で発見されてしまいます。絶望する主人公ですが、軍警察であった経験を生かし、息子の死の真相を突き止めようと行動を起こします。そして…

アメリカで実際に起きた事件をもとに「クラッシュ」や「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本で知られるポール・ハギスさんが映画化しました。

現代の戦争はテクノロジーの進化により凄まじく変わっています。どこからともなくやってくる銃弾に怯え、爆弾は一瞬で自分をあの世へ送ってしまいます。
逆に敵の死もまたあっという間です。スイッチ一つ、引き金一つ、遠くから、誰かもわからない人間を撃ち殺すことだってあります。
自分の命が、他人の命が、こんなにも軽いものだったんだと…思ってしまうのかは実際に体験していないので言えませんが、映画を観ているとそう感じてしまうことがあります。

自分の想像をはるかに超える出来事の連続の中で、心が壊れてしまうのはなにも『弱い人間だから』ということではないように思います。

主人公である元軍人の男性は、厳格で自分を律する心を持っており、綺麗に整頓された宿泊先のモーテルにもそれがよく出ています。
しかし、物語が進むにつれてその部屋が少しずつ散らかっていきます。そして観ている私たちの心も。

死と隣り合わせの日常を送るんです。その前と後で兵士の人生が変わってしまわない訳がありません。戦争なんですから。

実際に起きた事件から、一人のなんでもない青年の、戦争によって狂わされてしまった人生を、知ることができます。

 

 

いかがでしたでしょうか。
意外としっかりとした作品というのは少ないのだなというのがまとめてみたところの僕の感想です。

そしてもう一つはイラク戦争そのものよりも、イラク戦争後の作品の方が多いんだな。ということです。

あまりよくは知りませんが、そのこともまた、イラク戦争というものの性質を表しているのかもしれません。いやっ、本当に知らないけど。

読んでいただきありがとうございました。

あわせて読みたい