『不思議なことはまだ世界にたくさんあるんだと思わせてくれる。』Amazonオリジナルドラマ「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」【海外ドラマレビュー】

まずは予告をご覧ください。

 

なんとなく何か作品を観たいなと思い、プライムビデオのページを開いたのですが、なんとなくアイキャッチ画像の絵に惹かれ、なんとなく予告を観始めたところ、なんとなくこの不思議で静かな世界を味わってみたく思い、なんとなく第一話の再生のスイッチを押しました。

なんとなく観始めてよかったです。予告からでも伝わってくる映像の素晴らしさは本編でも変わらず。絵本のように素晴らしいシーンがずっと続きます。そして物語としても非常によくできています。

その素晴らしさの前にまずはあらすじから解説していきたいと思います。

あらすじ

あらすじを書くのも少し難しいのですが、このドラマの一番はじめ、エピソード1の冒頭は、一人の老人がこちらに向かってこう語りかけてきます。

「こんばんは。場所によってはおはようかな。私はラス・ウィラード。実験物理学マーサーセンター(MCEP)の創設者です。
施設はオハイオ州マーサーの地下にあり、地元では“ループ”と呼ばれています。
その目的は、宇宙の謎を解き明かし調査すること。我々独自の研究の結果、ありえない出来事が、ここでは現実に起こります。町の人々は皆ループとなんらかの関係があり、皆さんは彼らの物語を少しずつ知っていく。
それでは、始めましょう。」

基本的には一話完結で、毎話主人公が違います。ですが、町の人々をフォーカスしてますので、どこかで少し繋がっていて、それぞれの『その後』的なものも知ることができます。

一話に一つ、テーマのように不思議なことが起きて、それにより主人公たちが葛藤し、変化していきます。

ジャンルとしてはSFが最も当てはまるかと思います。

シモン・ストーレンハーグのイラスト世界を元に織り成される物語。

シモン・ストーレンハーグさんをご存知でしょうか。

僕は全く存じ上げなかったのですが調べてみて、また、絵を見て、もう画集が欲しくなるくらいファンになりました。

例えば↓のように、未来なのか、どこか違う世界なのか、不思議で、それでいて日常の延長線上にあるような、場合によっては懐かしさすらも感じるような絵が特徴のようです。好き。

シモン・ストーレンハーグさんはスウェーデン人アーティストということで、絵から寒さや物悲しさを感じるものが多いように思います。

そしてその絵にインスパイアされ、この作品は作られたようで、その絵の持つ不思議さや物悲しさが見事なまでに作品に表現されています。

それは映像としてだけでなく、物語でも同様です。

不思議なことを不思議なまま物語に。

いわゆるSF的な物語を期待している方は、物足りなさを感じてしまうかもしれません。

ジュブナイル的な物語はありますが、決して「スーパー8」や「グーニーズ」のようなスケールの大きなものではなく、もっと主人公の日常や感情の変化に焦点を当てています。

例えばタイムスリップの話を書く時。一般的な物語は、誰かが事故で死んでしまい、その人を生き返らせるか、死なないようにするために過去に戻ったりして右往左往しながら物語は進んでいくかと思います。例えばの話。

しかし「ループ」ではそうはなりません。死んだ人は生き返らないし、時は元に戻せません。

描いているのは人々の生活であり、SF的な現象ではありません。

言ってみれば不思議な現象も、この世界では自然の一部として受け入れられています。

その中で人々がいかに生きているかがこの物語のテーマであり、主人公の抱える葛藤が、その不思議な現象によって表出することで物語は進んでいきます。

風が吹くことをいちいち説明しないように、人々が歳をとっていくことをいちいち説明しないように、不思議なことを、不思議なまま物語にし、それについてはあまり説明しません。

物語だからって、全てを説明してくれるわけではないし、矛盾やほころびが全て元通りになるわけではありません。それは人生と同じです。

大きな大きな自然の中で生かされている、儚く美しい人生の姿を、まるで童話のように美しく、丁寧に描いています。

とても素晴らしい物語です。

第8話ではジョディ・フォスターが演出を勤めています。

演出は毎話違う監督が勤めているのですが、脚本は全話ナサニエル・ハルパーンさんが執筆しています。

ナサニエル・ハルパーンさんは主にTVドラマの脚本を執筆しており、「レギオン」の脚本の共同執筆もしているようです。その点からしてもSFなどの日常から少し離れた設定の話が得意なのかもしれません。いやっ、しかしこの「ループ」のクオリティからしてかなりの実力の持ち主なのは明らかであり、個人的にこれから注目していきたいと思います。

演出に関しましても、どのお話も本当に素晴らしく、アメリカのドラマ作りのクオリティの高さにため息が出ます。

お話ごとの演出家と一言程度の感想を以下に書き連ねました。

  1. マーク・ロマネク
    主にMVの監督を勤めており、コールドプレイの「スピード・オブ・サウンド」やレッチリ の「キャント・ストップ」の制作もしているようです。すごい。
    この回は第一話ということもあってか、全話の中で一番スケールの大きさを感じるお話でした。感じるだけで大きくはないかもしれません。どこまでもパーソナルな話です。
  2. ソー・ヨン・キム
    あまり制作した作品は出てきませんでしたが、「ラブソングに乾杯」など、マイナーでありながら評価の高い作品もあり、これからに注目の監督のようです。
    登場人物の感情や状況を丁寧に描いていて、少し難しい設定のものを不自然なく理解させてくれて、それでいて絵も美しく、とても素晴らしかったです。「ジェイコブ!」ってなります。
  3. ディアブラ・ウォルシュ
    この方もあまり作品は出てこなかったのですが、「素敵なウソの恋まじない」が最近ですと最もポピュラーな作品のようです。
    予告を観ると「素敵なウソの恋まじない」はだいぶポップな色合いでしたが、「ループ」では色合いを落として、静かな、そして美しい絵作りをしています。最初の湖のシーンがとても美しく印象的でした。あと女の子かわいい。
  4. アンドリュー・スタントン
    この方はかなりの実力の持ち主のようでして、「トイ・ストーリー」の原案・脚本や、「ファインディング・ニモ」「ウォーリー」ではアカデミー長編アニメ映画賞を受賞している方のようです。すごい。
    この回の主人公は男の子と、おじいちゃんです。この方は「カールじいさんの空飛ぶ家」の製作総指揮も勤めていたようで、まさにもってこいの人選と言えるかもしれません。僕はなかなかこの回は余韻が大きかったです。
  5. ティム・ミランツ
    この方もあまり制作した作品は出てきませんでしたが、「Patrick」というコメディドラマの監督を勤めたようです。
    確かにこの回は割とおかしみのあるお話ではあります。ただ、そこから滲み出てくる主人公の思いが、哀愁を感じさせます。あとロボットがかわいい。
  6. チャーリー・マクダウェル
    この方を調べようとすると交際の話ばかり出てきてしまい実力がよくわからないのですが、「ザ・ディスカバリー」というSFの話の監督・脚本を勤めたようです。
    この回では「ループ」がなんなのかがほんの片鱗だけ見えます。しかしほんの片鱗です。この回の終わり方は、やはり従来の物語ではなかなか無いような終わり方をしており、人によっては少し、「ここで終わるのか!」と思うかもしれません。
  7. タイ・ウェスト
    この方は「サクラメント 死の楽園」など、ホラー的なものに携わることが多いようです。
    実際この回も、全話の中ではホラーというか、化物出てくる系なので、もってこいの人選だったように思います。この回も人によっては「ここで終わるのか!」と思うかもしれませんが、でもまー、それしか無いよなーという感じです。
  8. ジョディ・フォスター
    最後の回は、まさかのジョディ・フォスターさんが監督を勤めています。ジョディ・フォスターさんて今までもいくつか監督を勤めている作品があるんですね。
    この回は、個人的には一番好きです。それこそ不思議な出来事が起きても、人々は当たり前のように受け入れているので、人によっては「む?」となるかもしれませんが。しかし僕にとっては、人生の儚さ、尊さ、不思議さが一番感じられた回であり、観終わった後、なんとも言えない気持ちになりました。

余白を観るように物語を観る。

例えばシモン・ストーレンハーグさんの絵を見る時、そこに細かい説明はなく、見る人が観察し、共感し、勝手に理解していくものだと思います。言ってみれば余白を楽しんでいるわけです。

この「ループ」という作品の特徴は、美しい絵と、丁寧な心理描写、不思議な世界観と共に、あえて詳細を説明しない点もあると思います。

そこで好き嫌いが分かれてしまうかと思いますが、例えば絵を見るように、物語の余白を観ていただければ、きっと楽しく鑑賞できるのではないかと思います。

個人的な話ですが、僕はこのドラマを観終わった後、夜道を歩いている時にふと見た木の揺れから、一瞬自分が「ループ」の作品の中にいるような錯覚を得ました。ね。気持ち悪い。一瞬ですからね一瞬。

同時に

「あぁ、全てがお見通しのように見えてしまっているこの世界にも、まだ不思議でわからないことっていうのはたくさんあるのかな」

とも思いました。

作品が日常を侵略した、僕にとってはなんとも稀有で大切な作品です。

こちらもおすすめ。

SF作品でしたら、「ウエスト・ワールド」もおすすめです。

こちらは「ループ」とは違い、スケールが大きく、先が気になって気になってしょうがなくなるドラマです。↓でオススメっぷりも書いておりますのでよろしくければご覧ください。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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