『まさか泣くとは思っていなかった。』永井聡監督・菅田将暉主演「帝一の國」

 

『ただ話題のイケメンを集めただけの、中身空っぽのスッカラカン映画』なんじゃないかと思っていました。

でも、思っていたよりも長く話題になり、評価もかなり高く、

あれ?この映画もしかしてしっかりと面白い映画なんじゃないか?

と思い観始めました。

『ただ話題のイケメンを集めただけの、中身空っぽのスッカラカン映画』じゃありませんでした。

開始5分ほど、菅田将暉くん演じる帝一の語りに、既に心を奪われていました。

そしてそこからハイテンションで進行する物語。いやあ面白かった

始まりから終わりまで、いまだに鮮明にワンシーンワンシーンを覚えています。それくらいに印象的で、魅力的で、好きになるシーンばかりでした。

あらすじ

主人公の赤場帝一(菅田将暉)。彼の夢はいつか総理大臣になり、自分の国を作るということ。そのためには、国内屈指の名門校である海帝高校で生徒会長の座につかなければならない。海帝高校で生徒会長の座についたものには、将来の入閣が約束されているからである。2年後に控えた生徒会長選のための、帝一の戦いを描きます。

そもそも原作が面白いのでしょう。

僕は原作は読んでいません。ただ、存在は知っていました。

古屋兎丸先生らしい独特の絵柄と、テンションで物語で、人によって好き嫌いがはっきりするであろうに、かなりの人気を持っていましたので、その独特さを振り切るくらいの物語としての面白さがあるのだろうと思っていました。

実際に映画で表現された「帝一の國」の物語はとても濃密で、入り組み、一筋縄ではいかない、とても面白いものとなっていました。

何よりも日本の選挙を生徒会選挙になぞらえ、それぞれの戦略など、これが実際の日本の選挙を表しているのであればクソだなと思う部分もありましたが、わかりやすくいながらも内容の濃いものになっており、かなり取材しているのが伺えました。また、その対立構造は保守とリベラルの戦いの構造のようにも見え、と言っておきながら政治については全く詳しくありませんが、そのような奥深さの点でも、面白いものになっていました。

そしてそれぞれのキャラクターも本当に個性的で素晴らしく、全員のことが好きになりました。

漫画は基本的にキャラクターが命ですから。その個性も、そして漫画の持つ世界観も含め、それらを殺すことなく映画にできていたのではないかと思います。

そしてそれはやはり、監督の手腕が素晴らしかったからなのではないでしょうか。

永井聡監督とエキセントリックな物語は相性がいい。

永井聡監督はもともとCMディレクターをやっていましたが、2005年には「いぬのえいが」という犬と人に関わる短編映画の監督していました。

映画監督として名前がで始めたのは妻夫木聡さん主演作品「ジャッジ!」の監督を勤めた頃ではないでしょうか。

この「ジャッジ!」は、当時話題になったことや、CMディレクターの作る作品ということで、一体どんなものなのだろうかと観たのですが、正直に言うとあまり面白くはありませんでした。

たくさんの登場人物が織り成すドタバタ劇で、俳優さんはとても豪華でキャラクターも個性的なのですが、なんとも演出がCMの手法を用いている印象で、15秒や30秒のものなら印象に残って素晴らしいのですが、2時間それが続くとかなり胃もたれになります。キャラクターも先ほど個性的と書きましたが、上っ面の個性だけで、深掘りしていないので薄っぺらい。

あまりよくない印象をもった監督さんでしたので、その後の作品は特に注目していませんでした。

しかし「帝一の國」に関しては、おそらくCMの仕事で鍛えた、少しくどめな演出と、エキセントリックな古屋兎丸先生の世界観とがかなりマッチして、テンションが高く、ぶっ飛びながらもそれがキャラクターの個性にもなっていて、とても印象的なシーンが次々と繰り出される素晴らしい作品になっていました。

また、CMディレクターらしく、↓の美美子ダンスのように、観ている人を楽ませる工夫も所々にあり、とても楽ししむことができました。

 

永野芽郁ちゃんかわいい…。

思うのは、ぶっ飛んだ演出もやり過ぎた演出も、キャラクターの魅力を伝えるために存在しているのであれば、キャラクターを中心に考えられているのであれば、そのぶっ飛びもやり過ぎもキャラクターの魅力になりますから、相乗効果としてとても素晴らしいものになるのではないでしょうか。

しかしエキセントリックなキャラクターというのは、素人考えですが、なんとも難しそうですが、今回改めて、菅田将暉さんの演技に驚嘆しました。

菅田将暉くんはエキセントリックな演技がメチャメチャうまい。

僕が菅田将暉さんを俳優として注目し始めたのは大河ドラマ「直虎」からでした。

俳優さんはドラマのイメージがそのままその人のイメージになってしまいがちだそうで、「直虎」の中で菅田将暉さんは後に「直政」の名をもらうことになる虎松を演じており、その虎松がなんともエクセントリックな性格だったので、虎松のエキセントリックさと帝一のエキセントリックさが不自然なく重なり、適役と思ったのかもしれません。

しかし、僕が思う菅田将暉さんの特徴の一つに「感情の振れ幅の大きさ」があります。

いっきに感情が沸騰するように怒りの表情へと変えることができる。それでいて陰の表情にも突き抜けるように落ちていくことができる。

そういった吹っ切れ方というのは、いわゆるクレージーな演技として、一見すると誰でもできそうに思えますが、しっかりと段階を踏んで表情やアクションを見せていかないと、薄っぺらい説得力のないものになってしまうと思います。

その点、菅田将暉さんの演技は実はかなり繊細で、エキセントリックに振り切れる演技の前後で、細かく意味を重ねているからこそ、エキセントリックでありながら、観ている人の心にすっと入ってくる演技ができるのではないでしょうか。

もう一つ、「帝一の國」で感じたのは、菅田将暉さんのスピーチのうまさです。

菅田さんの話す言葉って、なんか耳に入ってきますよね。

最初の語りのシーンでもそうなんですが、声質なのか呼吸のタイミングのうまさなのか、はたまた強弱の付け方なのか、その全てか。すっと惹きつけられ、物語の中に入っていきました。

とまー、演技経験の全くない人間が演技について語りましたが、とにかく言いたいことは、菅田将暉さんの演技がとてつもなく素晴らしかったということです。

実は結構な量の涙が出てしまいました。

いやっ、まさか泣くとは思っていませんでした。しかも涙の量は結構なものでした。

帝一が自分の國を作る理由を知った時。そこに過去の自分と重なる部分があったのかもしれません。

いやっ、それよりも菅田くんの演技の落差にやられてしまった部分が大きいのでしょう。

ハイテンションで、どんな試練も突き破ってきた帝一が、急に弱さを見せ、まるで子供のような表情を見せた時に、グワァーっと、胸に感情の津波が押し寄せてしまい、涙を抑えられなくなってしまいました。

菅田くんの演技と、それを魅せる演出にまんまとやられてしまいました。

 

 

原作ファンならずともオススメできる、エンターテイメント作品となっていますので、ぜひ、観てみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。