宇多田ヒカルのアルバム「初恋」収録曲「夕凪」を聴いていたら『自分がどこにいるのかわからなくなってしまった』【レビュー】

宇多田ヒカルさんの復帰後2枚目のアルバム「初恋」。

レビューを書かなければ書かなければと思いながらもう1年が経とうとしています。正直今も書けるかと言われれば、なかなか書けたものじゃない。表現する言葉はなんとなく浮かんでいるのですが、なんか恐れ多いと言いますか、なんというか。

しかし今日はアルバム「初恋」の中の、 ある1曲を聴いている時に起きた内面の出来事を元に、その曲についてレビューしたいと思います。

その曲とは11曲目の「夕凪」です。

「夕凪」はもともと前アルバム「Fantôme」の時に制作されていた。

なんと、このアルバムの制作にはNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」が密着しており、デモ作りからレコーディングまで、作品作りに試行錯誤する姿が映し出されていました。

その中でも最も苦悩していたのは「Ghost」という仮タイトルのついた楽曲。

後に完成され「夕凪」という、今回レビューするこの曲名になるのですが、実は2016年にリリースされた前アルバム「Fantôme」制作時にすでに存在し、試行錯誤してみたが完成に至らず、今回のアルバム「初恋」制作時においても、なかなか正解の見えない、いわゆる難産な楽曲でした。

なぜこんなことを書いたのか。この「夕凪」という曲。このアルバムにおいて非常に異質であり、重要な楽曲であると感じており、その理由はやはり楽曲自体が既に前アルバム「Fantôme」の時に存在しており、また、前アルバム「Fantôme」に収録されるべき楽曲であったと考えるからです。

しかし収録されなかった。収録できなかった。完成できなかった。なぜ完成できなかったのか。

前アルバム「Fantôme」では宇多田ヒカルさん自身がその楽曲の持つテーマに真に触れることができなかったからではないか。と考えています。

ねー。なんか偉そうだよねー。すいませんー。

しかし、なんとか、少し偉そう度合いを下げて言うと、この「夕凪」と言う曲は、前アルバム「Fantôme」と、今回のアルバム「初恋」を繋ぐ曲であるのではないかと考えています。


「夕凪」は『むき出しの魂にそのまま触れているような楽曲』

僕はこの曲を外でイヤホンで聴いてる時、自分の居場所がよくわからなくなる感覚に襲われました。

まるで、むき出しの魂にそのまま触れているような。

生命が生まれる前の「世界の前の空間」に自分が溶け出して行くような。

時間感覚や上下左右のない、生命の生まれる前の、魂の生まれる前の空間に触れている、溶け出して行く感覚。

それは喜びにあふれたことによる感慨なのか。涙が勝手に流れてくるのを抑えるのに苦労しました。

 

とまあ、なんかカッコつけたことを書いていますが、この『仕事の休憩中、外で散歩しながらイヤホンで「夕凪」を聴いていたら不意によくわからず泣きそうになり、恥ずかしいから必死で涙をこらえていた』体験がやっとレビューを書こうと思ったきっかけです。

「Fantôme」は死を、「初恋」は生を歌ったアルバム。

前アルバム「Fantôme」は、鎮魂歌だったと僕は考えています。というか結構そう言っている人が多いです。

誰に?もちろんお母さんに対する。

ものを作る時に、0から1を作り出す時に、作ろうと思って作ったものは、浅はかで愚にもつかないものになると考えています。

ものを作るということは「作る」のではなく正解の形を「探す」感覚に近いと思っています。偉そうに。

何が言いたいかというと、そうやって「無意識」の領域に触れることで生まれるものを表現しているで、意図せず、自分の思っていたことや、言ってみればデトックスするように、その時のモヤモヤが表現されることになるのが、ミュージシャンや、ものを作る「表現者」と呼ばれる人たちの特性であると思います。

なので「Fantôme」も、結果的に鎮魂歌のアルバムになっていったと言えるわけで、そこに宇多田ヒカルさんの意図が入っていたかわわかりませんし、どーでもよい。

そして今回のアルバム「初恋」です。

このアルバムの印象的なジャケットを見た時「あぁ、母の顔をしているな」と思いました。

実際このアルバムは「あなた」や「Good Night」など、親の目線からみた子供の姿を描いと思われるような歌詞が多々見受けられます。

そしてなによりこのアルバムのタイトルでもある曲「初恋」です。

「誰かを想う」という人間の根源的とでも言える感情を歌い、その後ろに生命力さえも感じる、ダイナミックなアレンジ。

生きることの喜び。生きて、誰かを愛して、別れ、傷ついても生きていく。

生命が生まれて死んで行くように、人が出会い、別れ、また出会う。その繰り返しのようなダイナミズムを感じます。

前アルバム「Fantôme」で死を歌い、今回のアルバム「初恋」で生きることの喜びを歌った。

そうやって生と死を歌ったからこそ理解できた「Ghost」という仮タイトルをまとった「夕凪」という曲。

生と死の間の、魂に直接触れるような曲が出来上がったのではないでしょうか。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

若干のアルバムレビューも交えて書けましたが、果たしてこの先、実際のアルバムレビューを書けるのかどうか。

そのくらいこのアルバムは僕の中で恐ろしいというか、恐れ多いアルバムです。

単なるレビューなら書けます。「相変わらずリズムがすごい」とか。「相変わらず天才的」だとか。

ただ、それだけでは終わらない奥行きというか、名盤特有の「何か」をとても感じるアルバムなので、それを理解しなければ本当の宇多田ヒカルさんファンの方に申し訳ないというか。

まあ、音楽なんて放たれて聴き手に届いた時点でその聴き手の受け取り方それぞれなので正解不正解もないと思うのですが。

じゃあレビューなんて書くなよって話ですが。それはとりあえずシカトして、逃げ道の方へ逃げます。

こんな主観的な駄文、読んでいただきありがとうございました。

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