『国に忘れ去られた町の物語』テイラー・シェリダン初監督作品「ウィンド・リバー」【映画レビュー(ネタバレなし)】

まずは予告編をご覧ください。

 

テイラー・シェリダンさんをご存知でしょうか。

僕が注目し始めたのは「ボーダー・ライン」を観てからです。この映画がまー面白かった!

「ボーダーライン」についての感想は↓で書いておりますが、特に大きく感じたのは脚本の素晴らしさでした。

『息継ぎできないくらい面白い。濃厚シリアス麻薬戦争映画inメキシコ』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督「ボーダーライン」【映画レビュー(後半若干ネタバレあり)】

素材についての取材力や話の展開。さらにキャラクターの印象付けまで。非常に濃密に絡められた素晴らしい映画でした。

もちろん監督も素晴らしかったのですが、僕は割と脚本家に注目しがちでして、この作品の脚本家の他の作品も見てみようと思い、「ウィンド・リバー」を観始めました。

「ウィンド・リバー」については正直に言いますと「ボーダーライン」ほどの面白さはなかったのですが、それは恐らく初監督作品だからということで、不慣れなカメラワークやテンポが故になってしまったのだと思うのですが、それでも、十分楽しめ、また考えさせられる素晴らしい作品でした。

あらすじ

舞台はアメリカ、ワイオミング州、先住民族が住む町。深い雪に囲まれたウインド・リバーで、地元のベテランハンターであるコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)が女性の遺体を発見することから物語は始まります。FBIから派遣されてきたのは吹雪の中に薄着で到着した、雪に慣れていない女性捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)1人のみ。雪深い山で地元警官は6人のみ。雪山の厳しい自然環境や不安定な気候にはばまれながらも、ジェーンは、ウインド・リバー一帯に詳しいランバートの手を借りて調べを進めていきます。

ミステリーかと思って観ていたら違いました。

殺人事件が起きるわけですから、その犯人を見つけ出そうとするミステリーなんだと思っていたのですが…少し違うようでした。

縦糸は犯人探しという形をとっていながら、それによって明るみになるのは『国に忘れられた町に住む人々の悲しみ』でした。

この映画は『国に忘れられた街に住む人々の悲しみ』を、愛する娘の死によって浮き彫りにさせた、濃密な人間ドラマの物語でした。

あらすじに少しだけ書いてありますが、この物語に主に出てくるのは先住民族のネイティブアメリカンです。被害者の女性もネイティブアメリカンですし、もちろん遺族も。しかし主人公や捜査官、警官はみんな白人なのですが。

もともと肥沃な土地に暮らしていたネイティブアメリカンの方々が住む場所を追いやられ、深い雪山に住むしかなくなってしまった。

そこは人生の喜びも、殺人の罪も、命も、何もかも奪っていきます。弱い者には死か、薬に手を出して人生を奪われるかしかないのかもしれません。

広大な土地と深い雪の中、たった6人の地元警官だけで治安を維持するのは至難の技です。

国のシステムから外れた場所で生きるには、主人公のハンターのように、強い人間でないと難しいのかもしれません。

そして被害者の女性は、とても強い女性でした。そのこともまた、失ってしまったことの悲しみを大きくします。

とても素晴らしい物語でした。

演出面は初監督ということもあり…。

ただ、演出に関しては、まだまだ…経験が必要かなという印象です。

「ボーダーライン」の濃密さ、緊張感と比べてしまった部分が多々あるのかましれませんが、もう少し違う見せ方があったかなと思う部分や、神経の行き渡り方が足りなかったかなと思う部分がありました。

特に最初の方は、誰が主人公か、どの視点で物語を観ていっていいのかを理解するのにワンテンポ時間がかかってしまいました。

例えば雪山の辛さ、慣れてなさを印象付けるのであれば、最初に女性の捜査官が登場するシーンで、捜査官が雪道に悪戦苦闘する様子を車の中から描くだけでも変わったのかなと思います。雪道だと前が見えないですからね。ワイパーガンガンで道を探してイライラしている様をワンシーン描くだけでも伝わるかなと思います。

そう、カメラがキャラクターの感情を捉える努力が少し足りなかったかなと、今なんとなく思いました。偉そうに。

物語が犯人探しなので、よくある玄関先にまで訪問して行って話を聞くシーンもあるのですが、そこも少し注意が必要だったかなという印象です。

訪問後は、場合によっては玄関から中に入っていくわけですが、その、外から中へ入っていく時、カメラが部屋の中の映像に切り替わるのが少し早かったかなという気がします。

言ってみれば訪問者側と迎え入れる側があるわけですが、観ている人がどちらの立場で観ればいいのか。もちろん訪問者側なのですが。それを無意識に理解させるための注意が、少し足りなかったかなと思います。

基本的にこの物語は、女性捜査官と一緒に事件やその他の状況を観ている人が理解しなくてはいけないものですので、その女性捜査官の感情の起伏、理解の度合いを、もう少しわかりやすくしても良かったのではないかと思います。

しかし、そういうのは経験を積まないと身につかないものだと思いますので、初監督作品としてはしょうがなかったかのとも思います。

しかし、それでも物語は素晴らしい。

という演出面での難点はありますが、しかし物語としてはまったくもって問題ないどころか、非常に素晴らしいものになっています。

後半の展開は目を見張る物がありますし、そこから後の主人公の思惑。そこから伝わってくる被害者となってしまった女性の強さや、家族の思い。ほんの少しの再生の兆し。

なんというか僕は…被害者の女性に…なんとも言えない魅力と言いますか。悲しみと、生きようとした強さへの尊敬が芽生えました。

しかし「ボーダーライン」についてもそうでしたが、やはりテイラー・シェリダンさんの取材力なのかなんなのか、物語の素材の選定や濃厚さは凄いですね。

これからもテイラー・シェリダンさんの作品をぜひ、追っていきたいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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